寝返りができるようになったり、「あーうー」とおしゃべり(クーイング)が上手になったり…日に日に新しい姿を見せてくれる赤ちゃん。その成長の一つひとつが、ママさん、パパさんにとって、何よりの喜びですよね。
そんな赤ちゃんの成長を見守る中で、ふと「あれ? なんだか最近、自分の手をじーっと見つめていることが多いな…」と感じることはありませんか? まるで、初めて自分の手を発見したかのように、不思議そうに、あるいは真剣な眼差しで、こぶしや指を眺めている…。
「この動きって、何かの意味があるのかな?」 「うちの子、順調に発達してるっていうこと?」
特に初めての育児だと、赤ちゃんのちょっとした仕草の一つひとつが気になったり、「これって普通なのかな?」と少し不安になったりすることもありますよね。
その、赤ちゃんが自分の手をじっと見つめる愛らしい仕草、実は「ハンドリガード(Hand-regard)」と呼ばれる、大切な成長のサインかもしれません!
今回は、この「ハンドリガード」について、どんな意味があるのか、いつ頃見られるのか、そして「うちの子、あんまりしないかも…」と心配な時の考え方などを分かりやすく解説します。
自分の手を「発見」! ハンドリガードってどんな意味があるの?
ハンドリガードとは、赤ちゃんが自分の「手」という存在に気づき、それを興味深そうにじーっと見つめる行動のこと。「手(Hand)」を「見つめる(Regard)」、そのままの意味ですね。
生まれたばかりの頃の赤ちゃんは、まだ自分の手や足が、自分自身の体の一部であるという認識がありません。それが、成長とともに少しずつ、「あれ?目の前に何か動くものがあるぞ?」「これって、僕(私)の体の一部なんだ!」「自分で動かせるんだ!」と自分の「手」を発見していきます。
このハンドリガードには、赤ちゃんの成長にとって、こんな大切な意味があると考えられています。
「自分」に気づく第一歩!
自分の手を認識することは、「自己認識」の始まりと言われています。「これは自分の体なんだ」と気づくことで、自分と自分以外の世界との区別をつけ始める、とても重要なステップなのです。
身体認識やボディイメージといった、自分自身の体についての感覚を形成していく初期段階にあたります。
「見る」と「動かす」をつなげる練習!
赤ちゃんは、自分の手をじっと見つめることで、「目で見たもの」と「手の動き」を結びつける練習をしています。これが上手にできるようになることで、この後、目の前のおもちゃに手を伸ばして掴んだり、口に持っていったりといった、より複雑な動き(目と手の協調運動)へと繋がっていきます。
将来、様々な動作を行うために必要な、視覚と運動機能を統合させる(視覚-運動協応)能力を発達させるプロセスです。
脳がスクスク育っている証!
自分の体の一部を認識し、それを意図的に目で追って見つめる、という一連の行動は、赤ちゃんの脳が順調に発達している証拠の一つと考えられます。特に、物を見る力(視覚)、体を動かす指令を出す部分、そして自分自身を認識する領域などが、連携して働いていることを示しています。
つまり、ハンドリガードは、単なる癖や、ぼーっとしているだけではなく、赤ちゃんが自分の体と心の世界を広げていく上で、とても大切な意味を持つ、素晴らしい成長のサインなんですね!
ハンドリガードが見られるのはいつ頃? 目安の時期を知っておこう
では、この可愛いハンドリガードは、いつ頃から見られるのでしょうか?
早い子では生後1ヶ月半頃から見られることもありますが、多くは生後2ヶ月~4ヶ月頃に、その仕草がよく観察されるようになります。
しばらくの間(数週間~数ヶ月程度)続くことが多いですが、これも個人差がとても大きいです。
仰向けでご機嫌にしている時や、抱っこされてリラックスしている時などに見られることが多いようです。一生懸命手を見つめる姿は、本当にかわいいですよね。
繰り返しになりますが、始まる時期、見られる期間や頻度には、大きな個人差があります。 「育児書には〇ヶ月って書いてあったのに、うちの子はまだしない…」などと、焦る必要は全くありませんよ。
あれ?うちの子、ハンドリガードしない… 心配いらない?
「周りの赤ちゃんは手をじっと見ているのに、うちの子はそんな様子、全然ないんだけど…」「もしかして、発達に何か問題があるの?」 ハンドリガードが見られないと、心配になってしまう気持ちも分かります。
でも、安心してください! ハンドリガードをしないからといって、必ずしも発達に問題があるわけではありません。
見ていない時にしているだけかも?
ママやパパが気づいていないだけで、実は一人でいる時などにこっそり(?)やっているのかもしれません。四六時中、赤ちゃんのすべてを見ているわけではないですもんね。
他のことに夢中なのかも!
手よりも、カラフルなおもちゃや、動くもの、ママやパパの顔など、周りの世界の方に強い興味を持っているのかもしれません。好奇心の対象が、たまたま「手」に向いていないだけ、ということも十分に考えられます。
発達の順番が違うだけかも?
ハンドリガードは、あくまで成長過程の一つの姿です。このステップをあまりはっきりと示さずに、次の段階(例:おもちゃに手を伸ばす)へスムーズに進んでいく子もいます。
やっぱり個人差!
発達の現れ方は、本当に赤ちゃんそれぞれ。ハンドリガードという形で、自分の手を認識する過程があまり目立たない子もいるのです。
心配な時は、ここをチェック!
ハンドリガードの「有無」だけで心配するのではなく、赤ちゃんの全体的な発達の様子を見てあげることが大切です。
- 目で物をちゃんと追っていますか?(追視)
- 音がする方に、顔を向けたり反応したりしますか?
- あやすと、ニコッと笑ったり、嬉しそうな反応を見せますか?
- 手足を元気にバタバタ動かしていますか?
- (少し月齢が進んで)目の前のおもちゃに、手を伸ばそうとしていますか?
もし、ハンドリガードをしないことに加えて、これらの他の発達面でも、「あれ?ちょっと気になるな…」と感じる点が複数ある場合(例えば、視線が全く合わない、呼びかけへの反応が極端に少ない、手足の動きが極端に少ないなど)は、乳幼児健診の際に保健師さんや医師に相談してみる、あるいはかかりつけの小児科医に気軽に聞いてみると安心です。
でも、一番伝えたい大切なメッセージは、ハンドリガードが見られなくても、赤ちゃんが元気にミルクを飲み、ご機嫌な時間があり、他の発達のサインが見られていれば、過度に心配する必要はないということです。
ハンドリガードは成長のワンシーン♪ 温かく見守ろう
赤ちゃんが自分の手をじっと見つめる「ハンドリガード」。それは、赤ちゃんが「自分」という存在に気づき始め、自分の体を使って世界と関わっていくための、愛おしく、そして大切な成長のワンシーンです。
その姿が見られる時期や頻度には、大きな大きな個人差があります。ハンドリガードをする・しない、多い・少ないで、発達が良い・悪いが決まるわけではありません。
大切なのは、一つの仕草だけに注目して一喜一憂するのではなく、赤ちゃんの表情、動き、声、日々の様々な反応…その子全体の成長を、ゆったりとした気持ちで、温かく見守ってあげることです。
赤ちゃんの成長は、教科書通りにはいきませんよね。毎日が新しい発見と驚きの連続です。その一つひとつの瞬間を、不安に思うよりも、「こんなことができるようになったんだね!」と一緒に喜び、楽しんでいけると素敵ですね。
もし、どうしても心配な気持ちが拭えない時は、一人で抱え込まず、いつでも健診や小児科で相談してくださいね。専門家は、きっとあなたの気持ちに寄り添ってくれるはずです。応援しています!