2歳のお子さんの子育てに日々奮闘されているママさん、パパさん、いつも本当にお疲れ様です!
「イヤイヤ!」と自己主張が激しくなる一方で、言葉がどんどん増えたり、ユーモラスな仕草で笑わせてくれたり、日に日に個性豊かになっていく我が子の姿に、目を見張る毎日ではないでしょうか。
大変さも可愛さもパワーアップする2歳児期。周りの子と比べて、「うちの子、言葉が少し遅いかも?」「遊び方やこだわりが強い気がする」「なんだかコミュニケーションが一方通行な感じがする…」など、1歳の頃とはまた違った心配事が増えてくるかもしれません。
特に、言葉の遅れや強いこだわり、癇癪(かんしゃく)などが続くと、「もしかして、自閉症スペクトラム障害(ASD)なのかな…?」という不安が、頭をよぎることもあるでしょう。
その不安な気持ち、とてもよく分かります。毎日一生懸命子育てしているからこそ、小さな変化にも気づき、我が子の発育を案じてしまうのですよね。
今回は、そんなパパさん、ママさんの気持ちに寄り添いながら、2歳児に見られることがある自閉症スペクトラム障害(ASD)のサインや、どのように向き合っていけば良いかについて、お伝えしていきます。
大切なのは、一人で抱え込まず、正しい情報を知ること。そして、気になることは専門家と一緒に考えていくことです。
自閉症スペクトラム障害(ASD)ってどんな特性?
まず、ASDについて基本的なことを確認しましょう。自閉症スペクトラム障害(ASD)は、生まれつきの脳機能の発達のかたよりが原因で起こる発達障害の一つです。育て方や愛情不足が原因ではありません。
主な特性として、以下の2つの領域における困難さが挙げられます。
対人関係や社会的コミュニケーションの難しさ
- 目を合わせることや、相手の表情・気持ちを読み取ることが苦手
- 周囲の人への関心が薄く、一人でいることを好むように見える
- 言葉の発達がゆっくり、またはオウム返しなど独特な使い方をすることがある
- 指さしや身振り手振りでの意思表示、共感が苦手
特定のものやことへの強いこだわり、感覚の偏り
- 興味の範囲が狭く、特定のもの(電車、数字、マークなど)に強い関心を示す
- 同じ遊びを繰り返したり、日課や手順、物の配置が変わることを極端に嫌がったりする
- 音、光、匂い、味、触覚などの感覚が非常に過敏、または逆に鈍感である
「スペクトラム」という言葉が示すように、これらの特性の現れ方や強さは、グラデーションのように一人ひとり異なります。
ASDは「病気」ではなく、その子の「特性」です。「治す」という考え方ではなく、その子の特性を理解し、本人が安心して過ごし、持っている力を伸ばせるように、周りの環境を調整したり、適切な関わり方を学んだりする「支援(サポート)」が大切になります。
【気づきのヒントとして】2歳児に見られるASDのサイン
2歳になると、言葉でのコミュニケーションや社会的なやり取りが活発になり、また自我も強くなるため、ASDの特性が行動としてより分かりやすく現れてくることがあります。
ただし、これから挙げるサインは、あくまで「気づき」のヒントです。 これらに当てはまるからといって、自己判断で「うちの子はASDだ」と決めつけることは絶対にしないでください。 発達のペースは一人ひとり大きく異なり、特に2歳児は「イヤイヤ期」と重なるため、こだわりや癇癪がASDとは関係なく強く出る時期でもあります。
そのことを念頭に置きながら、「もしかしたら…」と感じる点について、専門家へ相談する際の参考情報としてお役立てください。
言葉の発達が顕著にゆっくり、または独特な使い方
- 意味のある単語が数えるほどしか出ていない、または二語文(例:「わんわん、いた」「ママ、だっこ」)がほとんど見られない。
- 人が言った言葉をそのまま繰り返す「オウム返し(エコラリア)」が多い。(例:「おやつ食べる?」→「おやつ食べる?」)
- 抑揚がなく一本調子で話したり、CMや絵本のフレーズなどを状況に関係なく繰り返したりする。
指さしでの応答や共感が少ない
- 要求(あれ取って)の指差しはあっても、共感(見て見て!)の指差しが依然として少ない。
- 大人が「あ、飛行機!」と指さしても、その方向を見ようとしない。
他の子への関心が薄い、関わり方が一方的
- 公園などに行っても、他の子がいても気にせず、一人で遊び続ける。
- 他の子に関わろうとしても、相手の様子を見ずに、自分のやりたいことやルールを押し付けてしまう(例:おもちゃを無言で取ってしまう)。
ごっこ遊びが広がらない、パターンが決まっている
- おままごとをしても、野菜を切るだけ、お皿に並べるだけなど、同じ動作の繰り返しで、ストーリー性が見られない。
- 積み木を車に見立てるなど、何かを別のものとしてイメージする「見立て遊び」が少ない、または全く見られない。
こだわりが強い、変化への抵抗が激しい
- いつもと同じ道順、同じ手順、同じ物の配置でないと、ひどく癇癪を起こしたり、パニックになったりする。
- 特定の服しか着たがらない、特定のものしか食べたがらない(極端な偏食)。
- 興味の対象が非常に限定的で、新しい遊びや活動に誘っても、全く関心を示さない。
感覚の過敏さ・鈍麻さが生活に影響している
- 掃除機やドライヤー、サイレンなどの特定の音を極端に怖がり、耳を塞いで動けなくなる。
- 特定の感触(粘土、砂、のりなど)を異常に嫌がり、活動に参加できない。
- 食べ物の好き嫌いが激しく、食感が偏っている(例:ドロドロしたものしか食べない、カリカリしたものしか食べない)。
- 痛みや暑さ・寒さに鈍感で、怪我をしても平気な顔をしていたり、気温に合わない服装でも気にしなかったりする。
落ち着きがない、または動きがぎこちない
- 常に動き回っていて、椅子にじっと座っていることが非常に苦手(多動性)。
- 衝動的に行動してしまう(順番を待てない、急に走り出すなど)。
- 逆に、体の使い方が不器用で、転びやすかったり、ボール投げやジャンプなどの運動が苦手に見えたりする(協調運動の困難)。
診断はゴールじゃない。大切なのは「今」できるサポート
2歳代になると、発達相談や専門医の診察を経て、ASDの可能性が高い、あるいは確定診断を受けるケースも出てきます。もちろん、まだ診断には至らず「経過観察」となる場合も多くあります。
診断名を聞くと、ショックを受けたり、将来への不安を感じたりするのは当然のことです。でも、診断は決してゴールではありません。 むしろ、「その子の特性を正しく理解し、適切なサポートを始めるためのスタートライン」と捉えることができます。
大切なのは、診断がついたかどうかにかかわらず、「今、目の前にいる我が子のために、何ができるか?」を考え、行動していくことです。
療育(発達支援)
診断がなくても、発達に心配がある場合に利用できる支援サービスがあります。遊びを通して、コミュニケーションや社会性、運動能力などを育むサポートを受けられます。お住まいの自治体の窓口(保健センター、児童発達支援センターなど)に相談してみましょう。
保育園・幼稚園との連携
園の先生に子どもの特性を伝え、家庭と園で一貫した関わり方を工夫していくことが大切です。
親自身の学び
ASDに関する書籍を読んだり、ペアレントトレーニングなどの親向け講座に参加したりすることで、子どもへの理解が深まり、具体的な関わり方のヒントが得られます。
「ASDだから仕方ない」と諦めるのではなく、「この子の得意なことは何だろう?」「どうすればこの子は安心して過ごせるかな?」と、その子の可能性を信じ、良いところに目を向けて、できることを一つひとつ増やしていく…そんな前向きな姿勢が、子どもの成長を力強く後押しします。
2歳の気になるサイン、一人で悩まず専門家と共有しよう
2歳児に見られるASDのサインについてお伝えしてきましたが、これはあくまで一般的な情報です。お子さん一人ひとりの状況は異なりますので、これらの情報だけで判断せず、専門家の視点を取り入れることが非常に重要です。
もし、お子さんの発達で気になることがあれば、以下のことを心がけてみてください。
具体的な行動を記録する
いつ、どこで、どんな状況で、どのような行動が見られたか、なるべく具体的にメモしておきましょう。「言葉が遅い」だけでなく、「〇歳〇ヶ月現在、意味のある単語が〇個」「二語文はまだ出ていない」のように記録すると、専門家にも伝わりやすくなります。
一人で抱え込まず相談する
必ず、かかりつけの小児科医、地域の保健センター、児童発達支援センターなどの専門機関に相談しましょう。インターネットの情報だけで判断したり、一人で悩み続けたりするのは、精神的にも良くありません。
専門家に相談することで、客観的なアドバイスがもらえたり、必要なサポート(療育など)につながったり、あるいは「今はもう少し様子を見ましょう」と安心できる言葉がもらえたりするかもしれません。早期に相談・支援につながることは、お子さんの健やかな成長にとっても、そして親御さんの心の安定にとっても、大きなメリットがあります。
たとえ発達に特性があったとしても、子どもは周りの適切な関わりによって、持っている力をぐんぐん伸ばしていきます。
子育ては長い道のりです。頑張りすぎず、周りのサポートも上手に利用しながら、ママやパパ自身も心と体を大切にしてくださいね。応援しています!